時間や場所、石油の価格に依存しない薪割り斧の物語。

その男は20年前、フィンランド、シポーのこんもりと茂った森に移り住んだ。彼は美しい木々を理解したかった。彼は勇敢にも家を建てるために岩だらけの土地を開墾し始めた。

彼は道具屋で買ったハンドツールを使って仕事をした。 荒れ地と日の光も射さないほど巨大な枝を持った大きなトウヒや荒れ地が彼の仕事をよりいっそう困難にした。
しかし、男は諦めなかった。ノコギリをつかむと次々に木々を切り倒していった。

男は切り倒し、枝を払い、玉切りし、そして割った。 古い弓ノコは煙りをふき、斧は唸りを上げた。 骨の折れる仕事を通して、斧はしばしば彼の脚をかすめた。
彼は一度ならず斧でけがをしかかった。だが幸運にも彼はプロテクタ付き作業ズボンを履いていて助かった。 ブーツは何度か斧で痛めつけるたびに、ゴミ箱に放り込むしかなかった。

一日のきつい仕事が終わってから、男は松ヤニまみれの枝と、動力ノコでカットした幹をそれぞれ山のように積み上げた。 これらを薪にしなければ行けない。
「やれやれ、こいつらを薪にするのはもっと大変でしかも危険なんだ。」
男は諦めたようにつぶやいた。

彼は切り株に腰を下ろし、こけの中にグローブを投げ込み、額の汗を拭い考え込んだ。セールスが市場で一番と太鼓判を押した斧をつかみあげ、刃とハンドルを調べ始めた。樹液にまみれた手でその鋼の刃をみていたときに閃いた。
「そうか! 私が斧を改良すればいいのか!」

頭の中にいくつもの今までとは違う斧のアイディアが浮かんで来た。
アイディアは片時も彼の頭から離れず、朝食の間のわずかな時間もスケッチを描き続けた。地元の鍛冶屋に頼んで、いくつもの試作品を造った。

時折、道具屋で新しい斧を見つけた。
それらは、ヘッドを重くして打撃力を増していたり、悪ふざけとも思える仕組みを刃に加えていた。 やる気をなくしそうになることもあったが、彼のフィンランド人魂はそれを許さなかった。 男は安全でより効率のいい斧の開発を続けた。

新しい斧は、荒れ地を征服し、電気の来ない深い森の中でも問題無く使えて、トラクターが通り抜けることも出来ないし、踏み荒らすには惜しい苔むした森の中でも使えなければいけない。

来る日も来る日も新しい斧のことばかり考えるようになって何年か経ったある日、男は庭の大きな岩をバールを”てこ”にして動かしていた。
そのとき突然ひらめいた。
彼は興奮を抑えきれなかった。ついに答えを見つけたのだ。

彼は確信した。バールで大きな岩をこじる力を、斧と切り株に応用することができるはずだ。 彼は薮にバールを投げ出して、キッチンに駆け込んで新しい「てこの原理の斧」のスケッチを描いた。

そうして、「Vipukirves(レバーアックス)」が誕生した。

※Vipu=Lever , Kirves=axe つまりFinland語で「テコの斧」の意味